みなさんこんにちわ。日本からきました。私は「大下だいえん」といいます。
本日、みなさんといっしょに、この大会でお会いでき、またこうやって、発表できることを光栄に思います。
私は仏教の僧侶で、千光寺というお寺の住職をしています。他に岐阜大学の教育学部でボランティアの実践的活動について講義をもったり、看護婦の教育活動に専念しています。また、ボランティア活動の一貫としてNPO−「アジア環境文化交流協会」の代表を努めています。
わたしたちは、ここで「東洋的、日本的な癒しとボランティアについてのお話と、癒しのワ−クショップ」を時間の範囲内で行ないます。皆さんには、本日私たちの活動について、日本文と英語のリ−フレットを配布していますので、それを読んでいただければ私たちの活動の概要について、理解していただけると思います。今日は私と、音楽療法士「広川恵理」(自己紹介)、アシスタント「矢澤洋子」(自己紹介)がみなさんにすばらしい安らぎの時間と場を提供しますので、最後までゆったりとおくつろぎ下さい。
まず、最初にスライドを使って私たちの活動を紹介します。
■スライド1,私達の住んでいる岐阜県は、日本のほぼ真ん中に位置します。そして、北アルプスの麓に人口6万人の飛騨高山市があります。私たちのボランティア活動は、この日本の伝統と文化のふるさと飛騨高山を中心に展開しています。
■2,この町や村里で、15年前から、医療者、福祉関係者、教育者、宗教家、主婦、学生などで「いのち」をテ−マに学習会がはじまり、地域で課題となることをお互いに検証しあいました。このスライドで、食事をしているようすが見えますが、会合の後では、お茶を飲んだり、会食をしたりする理由に、日本的コミュニケ−ションの取り方があります。同じものを食べることは、共通の話題と心を共有する作業につながるのです。
■3,「いのち」の学習会は、段々と深くなり、様々な個人的、家族的、地域的課題を学習しながら、単なる学習会だけではなく、講演会や研修会などを通じて、広く社会にアピ−ルしていきました。
■4,1994年に日本で「第13回IAVE世界会議」を開催しました。私は、その時実行委員で準備から本番まで、約2年間の活動をしました。その時、飛騨高山へも「分科会」を誘致し、17ヵ国からのボランティアの活動家をうけいれました。
■5,6,古い飛騨のまちなみや文化を楽しんでいただきました。
■7,地元において私自身のボランティアの中心的活動の一つに、病院の入院患者や在宅療養者への精神的援助があります。ときに、専門的なSpiritualなケアや、パストラルケアの援助もします。
■8,9,このスライドは患者の要請で、ベットサイドで仏教の癒しと覚醒のための祈りも実行しているところです。しかし、現在の日本では、宗教家が末期の患者を訪問することは、まだ一般的ではありませんが、私は困難なこの問題に早くから取り組んでいます。
■10,11,12 ボランティア仲間では、病院での患者や医療従事者の癒しのために、コンサ−トを企画実施したり、老人ホ−ムでは、子供たちに着物を着せて、お年寄りの幼児期を回想する音楽療法を実践します。
■13,今日本で重要な問題は、ケアされる人のことも大切なのですが、ケアする側すなわち、働く人の精神的バランスが問題になっています。今年6月のWHOの101理事会でも、健康の定義という問題に、過去の「身体的、精神的、社会的な健全」にくわえて「霊的=スピリチュアル」な次元の問題を盛り込むよう、修正動議がだされています。日本の労働省でも、「働く人の70パ−セントが健康に不安をかかえている」とリポ−トしています。
私は、医療者とくに看護婦や介護の人たちの精神的疲れが、仕事のみならず、家庭や私生活にも多大な悪影響を及ぼしてしる現状をはやくから、感じていました。つまり、QOL(クオリテイオブライフ)の課題です。そして、日本人には、独特の癒す方法があるはずだと、10年ほどまえから研究してきました。その実践法がこれからのスライドです。つまり、東洋、特に日本人の死生観は自然や神仏と一体感になることが、癒しのポイントです。この風景は山のなかを、深い呼吸法を使ってゆっくり歩いています。ビルの谷間ではなく、大自然のリズムに自分をまかせます。ちなみにこの山は私のお寺がある山で、広さが40ヘクタ−ルあります。
■14,これは、その山のなかにある樹齢1200年、幹のまわりが12メ−トルの大杉に人が抱きついて、呼吸しています。杉の暖かくてパワフルなエネルギ−を人が受けとめ交流しています。
■15,医師や看護婦を対象にした「自分のQOLをみつめ、高めてゆく研修」です。お互いに、ケアとは人生とはなにかをゆったりした自然のなかにある仏教のお寺で実修します。
■16,心と身体をリラックスさせて、自分の命をみつめるワ−クです。そして、自分の死さえ、逃げないでみつめることが重要なポイントです。
■17,18,これは瞑想をしている医師や看護婦です。このような風景は、日本の医療機関ではみることはできません。彼らは初めて瞑想にとりくむのですが、日本人の遺伝子には、このような体験はむずかしくないようにインプットされているのか、すぐに深い瞑想状態をつくりだすことができます。瞑想は癒しと同時に覚醒への入り口でもあるのです。
■19,これは、死にゆく人と関るトレ−ニングです。ダイイングプロセスをあらゆる自分の心に置き換え、他者の心と同通する糸口をみつける重要な場です。
■20,これは、死んでからのあの世への旅立ちの心理状態を、イメ−ジするトレ−ニングです。真っ暗な山道をたった一人でろうそく一本を手にあるいてゆきます。仏教では、人の魂は死後49日の間は、この世とあの世との中間にいて、人生を振り返ると教えています。特別な信仰をもっていない日本人でもなんとなく、「輪廻転生」といって、生まれ変わりを信ずる日本人は少なくありません。心理家ユングも「チベット死者の書」を読んで、その後の研究に役立てていますし、最近アメリカの「ケン、ウィルパ−」の「意識のスペクトル」という本のなかでも、仏教を引用し、新しいトランスパ−ソナル心理学の世界を表しています。
■21,これは、先に死んだ者があの世で待っている風景です。つまり、あの世があるとか無いとかを議論するのではなく、科学一辺倒できた現代人が、あの世を自分でイメ−ジすることによって、末期の病床にある人の心理を理解し、疲れないで適切な精神的ケアができるようになるのです。みなさんも一度やってみませんか。おもしろいですよ。
■22,そのような研修のかたわら、わたしたちは、新しい時代に、アジアの一員である日本人がなにができるか、考えるようになりました。そこで「いのち」の具体的実践の場として「アジア環境文化交流協会」を3年前につくりました。環境や医療、福祉、教育、宗教、芸術などの日本的文化をおたがいが創造し、共有しあえる拠点づくりをはじめました。それは、面と空間をつなぐ点の役割をするものです。
■23,かつて日本人がお世話になり、交流を深めたアジアの人々を日本の飛騨へ招いて、様々な活動をはじめました。
■24,25,これは、今年の春の写真で、子供も大人も力をあわせて、ツリ−ハウスや地元の樹を切ってボランティアの拠点となるハウスを建ているところです。みんなで、わすれられていた身近な資源を再発見し、経済活動のバランスを考えます。人が暮らすとはどういうことなのか、個人主義に埋没してしまった日本人の心に問いかけています。
■26、作業をするまえには、全員で自然の神や仏に祈ります。祈るという子供が少なくなってきた現代には、重要な場面です。
■27,29,一緒に労働を分かち合い、課題を発見し、そして、問題解決のために活動し、互いに認め合う。あまりにも単純なことだけど、ボランティアの大切なキ−ワ−ドだと思います。
■30,アルプスが望める、豊かな自然を背景に、ここに、異文化交流の為の拠点と人間性回復の為のスペ−スを作りつつあります。私たちは、ここを「まんだら学苑」と名付けました。学校ではなく、いろんな価値観を認めあえるネットワ−クとしての交流スペ−スです。このプロジェクトの概念に、東洋的な「まんだら思考」があります。「マンダラ」は仏教による平和と調和を目指した世界観、生命観を表わしています。近代社会は、対立する思考を排除し、力の強いものが優先した構造をつくってきました。その考えは、人類や地球全体を危機に陥れようとしています。いまこそ、価値の基準を宇宙的、地球的規模で考え、思想や異文化の違いを認めあって、課題を共有し、本当の平和と調和、そしてスピリチュアリテイの向上をめざさぬば未来を子孫に残すことはできないのです。それが、「まんだら思考」であり、私たち「アジア環境文化交流協会」の提案なのです。私たちは、私たちの祖先が大切にしてきた思いを再確認し、アジアだけでなくみなさんのそれぞれのちいさな共同体から、その発進をすることが、重要だと感じています。人は疲れたらまず休み、十分自分自身を癒し、そして生きるエネルギ−を高めます。私たちのボランティアキィワ−ドは「自分の心がよろこぶことをしよう」です。どのような人生であったとしても、そこに「意味を見出だすはたらきかけ」こそ、ボランティアの原点ではないでしょうか。